Synmeの地政学がくしゅう帳

地政学でクールにザックリ日本の外交・軍事を学ぶ

アメリカの地政学06:1950-1953朝鮮戦争

さて、高橋洋一氏の世界のニュースがわかる! 図解地政学入門に戻って朝鮮戦争を学ぶ。最初に、朝鮮戦争をクールにザックリまとめる。

1950年[US174]朝鮮戦争勃発。当初は、北朝鮮が韓国に侵攻した戦争だった。しかし、韓国軍の北緯38度線独断先行突破を機に戦争は長期化し、アメリカとチャイナの代理戦争となった。シーソーゲームと化した戦争は1953年[US177]に結局元通りの北緯38度線で休戦。定義上は現在も終結していない。

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戦争の経過を高橋氏は以下の年表にまとめている。【括弧】内はSynmeが追記。

  • 1950年6月25日 北朝鮮軍、38度線を超えて南進開始。朝鮮戦争勃発
  • 1950年9月15日〜30日 国連軍、仁川上陸作戦
  • 1950年10月1日 韓国軍、国連軍、38度線を超えて北進【これを機に長期化】
  • 1950年10月18日 中国人民解放軍が参戦
  • 1951年1月15日 国連軍、37度線まで後退
  • 1951年1月25日〜6月15日 再び北進する国連軍と中朝軍が38度線〜37度線の間で激突
  • 1951年7月10日 戦闘が続くなか休戦会談開始
  • 1953年7月27日 休戦協定調印

シーソーゲームという以外に表現のしようがないが、38度線の回復だけが念頭にあり、朝鮮半島統一を目標としていなかったアメリカにとっては、1950年9月30日で休戦したかったというのが本音のところではないかとSynmeは思う。

アメリカとしては第二次世界大戦後の対共産主義の戦いが始まったばかりの中で負けられない戦いに巻き込まれただけで得るものは特になかった。とにかく、休戦によってアジアにおいて朝鮮半島南部まで到達した自国の影響力を維持できたこと、翌1951年[US175]の日米安全保障条約の締結によって日本をアジアにおける同盟国に引き上げる契機となったことなどがアメリカにとっての朝鮮戦争の意義であろうか。

北朝鮮のKim Il-sung首相がソ連のJoseph StalinとチャイナのMao Zedongの承認を取り付けた上で韓国に侵攻したこと、韓国のSyngman Rhee大統領がソウル回復後に独断専行で韓国軍に38度線を突破させたことにより国連軍(アメリカ軍主体)も北進せざるを得なくなったこと等を見ると、冷戦の枠組みと言うよりは朝鮮半島の政争にアメリカとチャイナが巻き込まれた戦争であったようにもSynmeには思える。

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高橋洋一氏の世界のニュースがわかる! 図解地政学入門に加えて、石平氏朝鮮半島はなぜいつも地獄が繰り返されるのか 中国人ですら韓民族に関わりたくない本当の理由で補足しながら朝鮮戦争の背景をもう少し学ぶ。

朝鮮総督府は、日本のポツダム宣言受諾を知っていたため、1945年[US169]8月15日に左翼民族主義者のYo Un-hyungに治安維持と日本人の生命財産を保障するよう協力を求めた。Yo Un-hyungは政治犯の釈放や独立運動への不干渉などを条件に受諾し、同日中に朝鮮建国準備委員会を結成した。同委員会は同年9月6日に全国人民代表者大会を開催し、朝鮮人民共和国の樹立を宣言している。

一方、アメリカとソ連は日本の降伏以前に協議し、38度線を軍事境界線とすることを取り決めていた。まず、同年8月16日にソ連軍が満州から朝鮮半島に侵攻。平壌に進軍して司令部を置いた。次いで、9月8日にアメリカ軍が仁川から上陸。京城に進駐して軍政庁を置いた。

また、同年12月16日にはアメリカ、ソ連、イギリスによる3国外相会議が開かれ、朝鮮民族自身の臨時政府の設置、米ソによる共同委員会の設置、5年間の信託統治下で、臨時政府と共同委員会との協議によって朝鮮の独立と統一を実現させていくことが発表された(モスクワ協定)。ところが、モスクワ協定を巡って激しい朝鮮民族内で政治闘争が展開。米ソは翌1946年[US170]3月20日から第1次米ソ共同委員会 を開催するも5月8日に無期限休会状態に陥る。1947年[US171]5月21日から第2次米ソ共同委員会を開催するも8月12日に完全決裂。

結局、南だけの単独国政選挙が実施され、Syngman Rheeが初代大統領に選出された後、1948年[US172]8月15日に大韓民国が成立した。国政選挙に反対していた北は、同年9月9日に朝鮮民主主義人民共和国の建国を宣言。Kim Il-sungは初代首相となった。韓国と北朝鮮はその成立当初から、自分の政府を朝鮮半島における「唯一の合法政権」と宣言し、お互いの政権を完全否定している。

 

文責:鵄士縦七 

 

世界のニュースがわかる! 図解地政学入門

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