恵方巻き商戦に今後の日本経済を垣間見る
恵方巻きもハロウィーンもここ10年程の日本企業の「商業的努力」によって、すっかり定着したようだ。
ハッキリ言って、これらは単なる「商業イベント」である。従って、文化的な意義は一切ない。日本の伝統とも、海外の異なる文化に対する理解の促進にも、まったく資さないこと請け合いである。ましてや、今後のニッポンに守り伝える必要性もゼロ。産業的にMake Senseする限り続くのだろうし、廃れたらそれまでという程度の話である。
そういうSynmeも一時期までクリスマスやバレンタインを「純粋」に受け止めていたので、20代位までの若い層の方々が大事な「年中行事」として受け止めていたとしても、「伝統」や「文化」と勘違いしてこどもに参加を強いたりしていたとしても、大きなことを言えたものではない。
Synmeが考えてみたのは少し違う視点で、以下の3つのポイントである。
- この商法は、基本的に「正しい」と思う。
- この商法は、悲しいほど「古い」。少子化が進行している日本では将来性はないだろうし、既に齟齬が生じ始めているのではないか?
- この商法を、「国家戦略」的に海外に向けて発信することはできないものか?
アトキンソンさんの本などを読んだ上でのSynmeのただの思いつきの域を出ないので、それぞれ簡単にコメントする。
まず第一に、クリスマスもバレンタインも恵方巻きもハロウィーンも基本「正しい」。経済活動的には「正しい」という意味である。製品をそのモノだけで売っていこうとする販売促進に比べて、多寡はあるとしても「ストーリー」を伴うイベントを普及させる方が波及効果もあって売り上げは伸びやすいだろう。
第二に、この商法は「古い」。だって、結局のところ、国内市場が縮小していく限り、どんどん非効率になっていくことは明白だから。そして、Synmeが言うまでもなく、こういうマスに訴えると言う方向性自体が時代遅れなのではないでしょうか?
ただ気をつけないといけないは、ハロウィーンの仮装やら渋谷の大騒ぎやらがSNSとかで拡散しているように、「コト消費」「参加型」という側面では時代にマッチしている面もあるということ。でもそれはあくまで結果論。Synmeが思うに、テレビを使ってCMを流して、というマス・コミュニケーションがなくても、拡散するものはするということ。大企業のマーケティング部門がコストをかけるべきなのは、最初からSNSで拡散されるような個々の趣味・興味であって、「恵方巻き」を一生懸命流行らそうとするのは非効率極まりない。
そして、恵方巻きの大量廃棄がニュースになったけれど、あれはこの商法が「古い」ことの証拠なのでは?とSynmeは思った。昔なら人が一杯いたし、人口に占める若年層が多かったから皆んなバレンタイン・チョコレートを買ってくれたんだけれど、今は人口の絶対数も減ってきて、かつ、他人の趣味嗜好に流されにくい壮年層・老年層が増えたから企業が望むほど「恵方巻き」という名付けられただけの「太巻き」を食べてはくれないわけだ。あと付け加えれば、昔の日本企業ならナマモノである「太巻き」でこのような一過性マーケティングを展開するほどネタに困っていなかったかもしれない。
最後に、SushiとかBonsaiとかSakeとかWagyu beefとかSumoみたいに、本当に世界がニッポンに求めているものについて日本人がハロウィーン並みに盛り上がれば、強力コンテンツとして、一層の外国人旅行客の訪日を促進すると思う。
商業的にも大いに意義があることなのだけれど、自国の伝統を知り、歴史を知り、来し方行く末に想いを馳せる文化的に非常に意義深いことに通底することなのではとSynmeは思う。また、若い人が大好きな「自分探し」もニッポン人である限りは、ニッポンの伝統・文化・歴史・宗教を知ることから始める方が、とりあえず海外行くよりは成功確率は高いように感じる。
それに、バブルの頃と違って、いまやニッポンはそこそこの「Minor Country」になりつつある。一番典型的なのは、グローバル企業のアジア・パシフィックのHQは香港かシンガポールに置かれるのが常識で、東京に置かれることは稀になってしまった。東京でのビジネスがAPACの一部として香港かシンガポールから統括されることも増えていくだろう。
とすると、ニッポン人がニッポンに詳しくなることは、それだけでグローバル・マーケットでは「ユニーク」な存在になれるということ。
ニッポンが国として成立したのは紀元後8世紀とも言われているので、1,400年間の歴史がある。現在世代のニッポン人全員がニッポン文化の海外発信に注力したとしても不足はないだろう。そして、そう言った取組みは文化の多様化という点から70億人いる世界の人々に貢献することになるんじゃないかな、とSynmeは考える。
Synme
今週のお題「わたしの節分」