Synmeの地政学がくしゅう帳

地政学でクールにザックリ日本の外交・軍事を学ぶ

鉄道と運河の地政学06:1903.01.22ヘイ・エルラン条約の締結

久し振りに鉄道と運河の地政学を学ぶ。今回と次回はアメリカによるパナマ運河の建設。最初に、クールにザックリまとめる。

1903年[US127]1月22日アメリカとコロンビアはパナマ地峡の100年間租借を定めるヘイ・エルラン条約を締結したが、コロンビア議会は批准しなかった。

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スエズ運河会社の倒産(1889年[US113])により、パナマ運河の建設はアメリカによって進められる事になった。フランス第三共和政はGive upしたわけである。

何より1901年に就任したアメリカ26代大統領Theodore Rooseveltがシーパワー理論を提唱したAlfred Thayer Mahanの影響を受けていたことが大きい。大西洋と太平洋をつなぐ運河がアメリカの国家戦略上の重要課題となったのである。

アメリカ連邦議会は1902年[US116]にパナマ地峡に運河を建設することを決定した。そして、パナマ運河はコロンビア領であった。

既に太平洋進出を成し遂げていたアメリカはパナマ運河を自国の管轄下とすることを望み、1903年[US117]1月22日ジョン・ヘイ国務長官とコロンビアのTomas Herran臨時代理大使との間でヘイ・エルラン条約を締結した。

ヘイ・エルラン条約(Hay-Herran Treaty、1903年[US117]1月22日締結)は、パナマ地峡全域を幅6マイル(10km弱)に渡って100年間租借するという内容であった。対価としては、1,000万ドルの一時金と年間使用料25万ドルを金で支払うという内容であった。

本当、お金で解決したがるのがアメリカの外交の特徴である。Synmeが思うに、注目すべきは、「アメリカは何でもお金で解決したがる汚ない奴らだ」等と言うこの惑星上でニッポン人しか言わないMinorな観測ではない。注目すべきは、「アメリカは然るべき対価を支払うクリーンな「取引」を提示しないと議会すなわちアメリカ国民が納得しない」という国内向けの建前を掲げることが多い、という点だとSynmeは思う。

もちろん、アメリカ人が求めているのは「合理性」ないし「理念」であって、クリーンな取引きに限らず、自国民の保護、自国権益の保護、国際的正義の遂行、リベンジなどもアメリカ人を納得させるために使われる。あくまで建前としてアメリカ政府がアメリカ議会ないし世論に対して必要とするだけなのであるが、アメリカ外交を学ぶ上では不可欠の視点である。

今回のヘイ・エルラン条約だって、実態はアメリカがチャイナで果たせなかった「租借」を自分の裏庭で真似してるだけである。

さて、アメリカ議会は3月14日に同条約を批准したが、コロンビア議会は批准しなかった。すなわち、ヘイ・エルラン条約は発効はしなかったわけである。まあ、コロンビア人に言わせればアタリマエではある。  

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1880年[US104]フランス第三共和政はコロンビア共和国から運河建設権を購入し、パナマ運河の建設を開始した。しかし、黄熱病蔓延、工事の技術的問題、資金難などにより1889年[US113]パナマ運河会社は倒産。フランス第三共和政は運河建設計画を放棄した。 

 

文責:鵄士縦七