Synmeの地政学がくしゅう帳

地政学でクールにザックリ日本の外交・軍事を学ぶ

アメリカの地政学43:1917.4.6ドイツに対する宣戦布告

アメリカの地政学を学ぶ。今回はドイツに対する宣戦布告。最初に、クールにザックリまとめる。

Wison大統領による講和仲介が拒否され、無制限潜水艦作戦の再開が宣言され、ツィンメルマン電報が公表されると、アメリカは1917年[US141]4月6日ドイツ第二帝国に対して宣戦布告した。

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1914年[US138]7月28日にオーストリア=ハンガリー二重帝国がセルビア王国に対して宣戦布告して第一次世界大戦が勃発してから3年弱、中立を掲げていたアメリカがドイツ第二帝国に宣戦布告し連合国側として第一次世界大戦に参戦した。

アメリカの参戦を主導したのはThomas Woodrow Wilson第28代大統領(在任:1913年[US137]3月4日〜1921年[145]3月4日)だったが、1916年に実施された大統領選挙においてWilson大統領は「アメリカの中立」を掲げて選挙戦を戦い、2期目の当選を決めていた。

Wison大統領にドイツ第二帝国に対する宣戦布告を決めさせた直接の理由は、Wison大統領による講和仲介に対してドイツ第二帝国が仲介を拒否する回答をしたことであった。これはドイツ第二帝国の無制限潜水艦作戦再開宣言(1917年[US141]2月1日)とほぼ同時期になされた。

アメリカの世論はドイツ潜水艦によるルシタニア号撃沈(1915年[US139]5月7日)により反独感情が高まっていた。

1917年[US141]3月1日に『ニューヨーク・タイムズ』がツィンメルマン電報を公表し、同月中に再びドイツ潜水艦の攻撃によるアメリカ人の死者が出ると、アメリカの第一次世界大戦に異議を唱える声はなくなった様だ。

ツィンメルマン電報とは、ドイツ第二帝国がメキシコに同盟と対米宣戦布告を打診するものであった。ドイツ第二帝国がメキシコに資金援助を与え、メキシコが米墨戦争(1846年[US070]4月25日〜1848年[US072]2月2日)で失った領土の回復を約束する内容であった。

メキシコが米墨戦争(メキシコでは、アメリカのメキシコ侵略(U.S. American Invasion of Mexico)と呼ばれる)で失った地域を「メキシコ割譲地」と呼ぶこともあるようだ。以下の地域が含まれる。メキシコ割譲地の詳細についてはメキシコ割譲地 - Wikipediaを参照してください。

  • カリフォルニア州全域
  • ネバダ州全域
  • ユタ州全域
  • アリゾナ州(後にガズデン購入によって併合した南部地域を除く主要部分)
  • コロラド州(旧テキサス共和国の境界以西)
  • ニューメキシコ州(ガズデン購入地を除くリオ・グランデ川以西)
  • ワイオミング州(旧テキサス共和国の境界以西および北緯42度線以南)

ちなみに、メキシコは「実現性が低い」という理由で4月14日にドイツ第二帝国の提案を拒否している。 

 

最後にドイツ第二帝国の外交上の過ちを学んでおこう。第一に、選挙戦で「中立」を謳ったWison大統領に何らの働きかけもしなかったばかりか、挙げ句の果てに「拒絶」したこと。第二に、実現性の低いメキシコによるアメリカ直接侵略という外交を展開し、暴露され、挙句メキシコには断られたこと、である。

すなわち、アメリカの参戦を防ぐ努力を怠ったばかりか、アメリカ世論に戦争を肯定させる最強の材料「アメリカ本土侵略の危機」を提供してしまったということである。

 

文責:鵄士縦七