地政学を学ぶフレームワーク08
それではロシアの地政学を学ぶ意義は何だろう?
ロシアはグレートゲームにおいてイギリスと対立し、中東とも深く関わってきた歴史を有し、冷戦においてアメリカと対立した大国である。冷戦終結の1つの大きな要因となったのもソ連のアフガニスタン侵攻と泥沼化だった。
18世紀から20世紀に掛けてのロシアは、南下政策を実現させるため、主にトルコ(オスマン帝国)と戦った。ロシアは、トルコに対して優位な立場を占めると、ザカフカースを抜けた先のイランに向かう。そして、イランに対して優位な立場を占めると、カスピ海の南岸をより東に進みアフガニスタンに向かう。
このトルコ、イラン、アフガニスタンという南下政策に対して、フランスやイギリス等が介入してくるので、ロシアはトルコやイランと何度も戦う必要が生じる。
イギリスとしては、ロシアのバルカン半島進出も阻止する必要がある一方で、アフガニスタンまでロシアが影響力を持つとイギリス領インドの権益を確保する必要も生じて来る。これが極東の動向も含みながら、英露間のグレート・ゲームを形成していく。
ロシアの地政学を学べば、イギリスの地政学の一定部分を反対側の視点からカバーできる。フランスの地政学を学び、ロシアの地政学を学び、東ヨーロッパ、中東地域、北ヨーロッパについて学習を済ませた上でイギリスの地政学を学ぶのが効率的だとSynmeは考えた。
ここで、高橋洋一氏の世界のニュースがわかる! 図解地政学入門を参照したい。同書は第2章でロシアの地政学を扱っている。高橋氏が挙げるロシアの主な戦争は以下の11個である(同書p.91-93)。[US歴]はSynmeが追記した。
- 1768年[bUS008] 第1次ロシア・トルコ戦争
- 1787年[US011] 第2次ロシア・トルコ戦争
- 1804年[US028] 第1次イラン・ロシア戦争
- 1812年[US036] モスクワ遠征(ナポレオン戦争)
- 1826年[US050] 第2次イラン・ロシア戦争
- 1853年[US077] クリミア戦争
- 1856年[US080] アロー戦争
- 1877年[US101] 露土戦争
- 1904年[US128] 日露戦争
- 1914年[US138] 第一次世界大戦
- 1939年[US163] 第二次世界大戦
アメリカは「条約」や「購入」など戦争以外の外交手法を巧く活用しながら領土を(ほぼ)常に拡張してきた(獲得し損ねたのはカナダくらいか?)。ロシアの地政学は対照的である。基本的に、戦争を唯一の手法として、「一歩進んで二歩下がる」的な領土拡張の歴史を有している。
アメリカとの違いという観点からもロシアの地政学を学ぶのは面白いとSynmeは考える。
文責:鵄士縦七